平沼:最後、会場から質問を取らせていただいても良いですか?

会場:先生。質問一つよろしくお願いします。モダニズム建築というのは、機能性と合理性、ファンクショナリズムとラショナリズムに基づいて直線を多用すると聞いておりますんですが、その現代モダニズム建築に対して、あのアントニオ・ガウディは美的、芸術的な、ファンタジー的な、メルヘンタッチな建築をつくっているわけですが、クライアントがコスト、出費において問題ないということでありまして、そういうガウディ・スタイルの建築のオーダーがありましたら、現在において、設計、建築可能かについてお伺いしたい。

難波:その質問は、僕よりも芦澤さんにした方がいいように思います。あるいは、象設計集団や石山修武さんへの質問ですね。僕が答えられるのは、質問の前半についてだけで、ファンクショナリズムとラショナリズムはまったく異なる概念です。ファンクショナリズムつまり機能主義は、その物が持っている様々な機能をいかに生かすかという考え方で、ラショナリズムつまり合理主義は、論理的な一貫性の追求ですから、両者を混同されない方が良いと思います。

会場:私は去年そういう建築の話を伺いました時に、モダニズムはそういうことだと聞きました。それは間違ってるわけですね。

難波:その混乱を招いた張本人はル・コルビュジェです。イタリア人のアルベルト・サルトリスという建築家が「合理主義の建築をめざして」という本を書いたとき、合理主義という用語を、当時のボザールが使っていたので、ボザールを毛嫌いしていたコルビュジェは、合理主義ではなく機能主義に変えるべきだと主張し、タイトルに変えさせたのです。でも、内容は合理主義なので混乱が生じた。それを今だに引きずって、混乱が日本にも入ってきたのです。

会場:クライアントがコストに糸目をつけないということでありましたら、ガウディ・スタイルのビル、住居は、設計建築は可能と言って宜しいんでしょうか。

難波:はい、もちろん技術的には可能だと思います。

会場:ありがとうございます。

平沼:ありがとうございました。では、これが最後の質問です。ゲストの皆さんにお聞きしていることですが、建築家とはどんな職業でしょうか。

難波:現代の成熟した技術を使いながら、住宅であれば、住み手と建築家が対話出来るような、生態学的な空間を生み出すことが、建築家の本質的な仕事だと思います。近代建築の最大の問題は、時間の要素を考えなかった点にあります。ですから、デザインをプロセスとして捉えることが、これからの建築家の仕事ではないでしょうか。

平沼:時間をオーバーしてしまいました。この辺りで終わりたいと思います。
今日はどうもありがとうございました。

芦澤:ありがとうございました。

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