手塚:(笑)いや、その話し。そしたら、ちょっとだけね。もともと叔父は私に頼むつもりだったようなのですよ。ところがですね、うちの叔父からの電話を、うちの父親が受けたんですね。そして父が回答したのは、貴晴はロンドンにいると。息子に病院設計してもらおうと思うんだけどっていったらうちの父親が、いや彼はまだ無理だよっと勝手に言って、鹿島建設の設計部を紹介するからって。 で、何かの拍子に、叔父さんの病院どうなったかねっと私が言ったら、お前には無理だから鹿島に紹介しちゃったからっていう話になって、冗談じゃないぞ!と思って日本に戻り、叔父さんにプレゼンテーションして、まぁそぐわないだろうなっていう感じでロンドンに戻りました。そんなことから数ヶ月か経って、ちょっと予算が足りないんだよって。やっぱね、見積もったら16億円になっちゃったんだけど、貴晴だったら8億円でできる?っていってきて、もちろん「できます!」と何の保証もなく言って。こういうの後先考えずに言うの得意なんですね〜。

平沼:アハハ。(笑)本当ですか。

手塚:ほんと、ほんと。(笑) それで8億円でやることになって、鹿島建設の方にはひどい目に合わされていると思われていそうだけど、やっとできあがったのがその病院ですね。

平沼:えっ、じゃあ8億でやられたですか?

手塚:たぶん最終的には、10億くらいかかったと思うんですけど。(笑)

平沼:あー、ははは。(笑)

会場:(大笑)

手塚:なので、鹿島建設の方にはしばらく顔を合わせられなかったです。でも本当に良くしていただいて。

平沼:じゃあ、先にちょっと作品を。

手塚:講演会を何回もしちゃって、リピーターの顔がよく見えるんですけど、申し訳ないんですけど、これ落語の時そばと同じで、同じネタを使いますけど、笑うときには笑ってくださいね。

平沼:ははは。

手塚:毎年新しいものばっかりつくってその話していたらネタが尽きちゃうんで、無理なんですね。
はい、見ていただいた通り赤と青でございます。知ってますよね? 私は全部青で、この辺でこう、脱いだほうが落語らしいかなと。

平沼:ははは。あ、本当だ。

芦澤:ははは。

手塚:「ふじようちえん」の話をすると、佐藤可士和っていう私の知り合いが提案してきて、手塚さん一緒に幼稚園やる?って、いいよって始めたのがこれで、最初に幼稚園を見に行ったら雰囲気が良いので、可士和さんと、つくりなおすのを止めさせる説得をしようという話になって。でも、いかにこの建物が地震に弱いかっていうことを説明されて、やむを得ずやったプロジェクト。
で、できたのがこれです。子どもっていうのは、輪っかがあるとぐるぐる回りつづけるので、円くしたらずっと走ってるに違いない、というすごく軽い発想でつくった建物ですね。そうすると木が邪魔なのですが、木を切るのもなんだってことで、こう、真ん中に残したままつくりました。根を切っちゃうと枯れちゃうので、調査を綿密にしまして。細かいことを言いますと、柱がバラバラになっているのは、構造の池田さんの発想で、中心がない方がいいんじゃないかと。なので、人の行動のじゃまにならないところに柱を打っているんですね。それでできたのがこれで、これは知ってる人が多いんですけど、もともと手すりがない方がいいって園長先生が言い出したんですよね。幼稚園で手すりがないとやっぱりまずいですよって言ったら、園長先生が軒先からネットを出して、落ちてくる子どもを受け止めるようにしたらどうだって真剣に言われて、それ無理ですよって言っても園長先生はなかなかすごい人で、説得するんですよね。気がついたら説得されて、立川市役所。その頃は民間がなかったんですよ。もう十何年前ですけど、市役所に行って、手すりがない代わりに軒先からネットを出して落ちてくる子どもを受け止めますって言ったらですね、あなた大丈夫ですか?って言われて、それで我に返って、幼稚園に帰って、先生、私頭おかしいって言われましたけどって言ったら、園長先生が立川市役所に電話してですね。園長先生がすごいのは、たくさん子ども育ててますから、幼稚園の先生って言うのは、市長さんよりも知名度があるんですよね。道を歩いてるとみんな知ってるって。何しろこの方1,200人も子どもを預かってるんですよ。そりゃすごいですよね。そうすると市役所の人はみんな生徒なんですよ。

平沼:あ、生徒なんだ。はは、頭が上がらない。

手塚:で、良かったのは、その頃ってまだ姉歯さんの事件が起きてなかったんですね。イケイケで、まぁ木の周りはネットでいいやっていう話になって、たぶんね、今駄目だと思うんですね。

平沼:ダメですね。

手塚:これで手すりでいいっていう話になったんですよ。全然子ども関係無いですよね。絶対真似できない。ざまあみろっていう。でね、子どもってやっぱりどんどん落ちていくんですよね。建築基準法上関係無いですよね。40人くらいいたりして。これ、この子は木が大好きだから木を食ってるところですよね。

平沼:食ってる。ふふふ。

手塚:でね、園長先生がどうしてもネットがいいって言い続けて、いくつかモックアップをつくって、弱いの強いのつくったんですね。園長先生が、弱いのをみて、この揺れるのがいいみたいなことを言って。

芦澤:はははは。

手塚:これ、弱いんですけどって。それを強くするのすごく大変だったんですけど、竹中さんがすごく頑張ってくれて、まぁ容易なことでは折れないようにできています。保育園とか幼稚園の手すりって言うのは10cm間隔じゃないといけないんですよね。頭突っ込めなくで、手を突っ込んだら抜けるっていう10cmっていう微妙な寸法で、これがなかなかよくて、こういうところをつくると、動物園の猿の状態になるという。

平沼:ははは、猿だ。

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