山本:いろいろやろうとしていて、でも、なかなか上手くいかなくてね。つまり、住宅とは専用住宅だと多くの行政の人は思い込んでいるので。お店があったりっていったことを一緒に提案してこうとすると、誰かがお店やったらとなりの人がお店だったら、ここで大きい音がしたら困るでしょ。全ての人とは言わないけど多くの人がお店やると上手くいくんですけど、1軒だけお店があるとか、そうするとマンションの中じゃ無理でしょ。無理じゃないかもしれない。実際、東京や大阪の都心ではマンション中事務所ですよね。現実はそうなっているんですけどね。

芦澤:実際そうですね。

山本:でも、あれは違反なんですよね。違反だけれども、設計事務所なんかもやっていますよね。そういうことが現実なんだけども、実際に法的に許そうとするといろいろ難しいというのはありますね。

芦澤:東北の方で1から街をつくるっていうようなベースですと、皆さん共感してもらえればできる可能性があるんじゃないかなと思ったりしているんですけど。

山本:東北の方でも公団、URの人たちと一緒にやろうとしたんだけど、開発の仕組みが、住宅は住宅になっちゃっているので。

芦澤:もう分かれてしまっているんですね。

山本:高台移転しようとすると高台移転するのはみんな住宅なんですよ。住宅を全部高台移転させちゃったら、低いとこに一体誰が来るの。強引にそれをやっているんですよ。かさ上げも2メートル3メートルのかさ上げ。猛烈に広い場所を2m、3mもかさ上げしちゃって、山の土を削って下に持って来ているんですよね。

芦澤:なんか運んでますよね。

山本:東北のリアス式の海岸のきれいなところをめちゃくちゃにしているんですよね。あのような開発の仕方をしちゃってるのはなぜかっていうと、住宅は住宅地としてつくるっていうのが近代的な都市計画の手法なので、それでまたURがほとんどやっている。URは区画整理という手法しかもっていないので真っ平らにして、道路を通して。他に方法がないんですよ。小嶋一浩さん達とか我々がやろうとしていることはほとんど実現するのは難しいですね。ましてやこういうことはほとんど聞き入れようとしないですね。

芦澤:独立国家をつくるかですね。どこかに…。

山本:地域ごとに決められる力を持つようなことをこれから考えていかないと。被災地だけじゃじゃなくてね。

芦澤:いきなり村とか大きい単位でやらなくても何人か仲間でやるとか徐々に人数を増やしていくとか、やり方はあるかもしれませんね。

山本:お店をもっている地域ってのは、地方自治体に対して非常に力が強いんですよね。横浜でもそうなんですけど、商店街のおじさん、おばさん達っていうのはめちゃくちゃ強くて、自治体からなんか言われても怯まないですね。それは当然で、自分たちの商売をしている場所で自分たちの利益がなくなったらどうすんだよって反論できる。だから、こういうようなところで自分たちの固有の自治的な力を持つためには、こういう自分たちがここで生産して利益を上げているような環境をつくることなんですよ。個人労働でたまたま来ているだけだと、その人たちだけじゃ地域活性化に関してはほとんど説得力がない。だから、大阪のような関西の方が僕は可能性があると思っているんですよね。地域社会圏みたいな、ある自分たちの考え方を、自分たちのすることを、自分たちの中で決めることができる、というような仕組みをつくっていけるのは。いままで大阪ではこういうことをやって来た伝統がある場所ですからね。東京とは全く違う、大阪の商人達は非常に大きなパワーを持っている。それは今でもその伝統があると僕は思うんですね。大阪でこそこういう可能性があると思っているんですけどね。

平沼:一点だけお聞かせください。建築と人との関係ってどのようになっていけばいいと思われていますか。具体的な建築の空間と人との関係って…。

山本:建築って一度それをつくるとみんなそれに合わせてそこで生活しますからね。さっきの金沢区の風景みたいな住宅群ができると、非常に従順に、そこで生活する人間になっていく。建築のつくり方を我々が考えて、それが実際つくられていくと、人間と建築の関係ってどんどん変わっていくんですよね。建築によって、人間の様々な振る舞い方っていうのは相当決められちゃっている訳ですね。知らず知らずのうちに。

平沼:あーそうだと思います。

山本:だから、ああいう団地を見て、今や全く不思議だと思わなくなっちゃっているこちらの感性っていうかね。それは住宅によってつくられてる訳ですよね。

平沼:なるほど。それでは具体的におねがいします。

山本:それではいくつか話しますね。
韓国のパンギョという場所です。これは4年前ぐらいにできた集合住宅で、100世帯、100戸の集合住宅で、3層で1世帯です。真ん中にちょっとガラスっぽい青い色になっている所が、エントランスです。9世帯から10世帯ぐらいで1グループをつくっていまして、クラスターを。そこにエレベーターがあって、地下からエレベーターでそこに上がってきます。これがエレベーターです。このエレベーターで地下から上がってくるんですよね。真ん中が大きなエントランスで、これが上のベッドルームで、下にリビングルームがあって、上下にこう別れるんですよね。このさらに下が駐車場です。こんな風にクラスターごとに分かれていて。これが1クラスターです。100戸が9つのクラスターに分かれています。断面はこうなっていて。1階、一番下が駐車場で、この駐車場からこのデッキにエレベーターで上がってくる訳ですね。真ん中のところが大きなエントランスで、みんなガラス張りです。下に階段で降りるとリビングルームで、向かいに、メインベッドルームが。それで上が、二つ子ども部屋がある。これがデッキのところですね。これができたばっかりの時で、建売のマンションですね。すごく高いんですよ。こんな風にガラス張りで、隣の人ともガラス張りで。買いたいって思って来た人で、「金魚鉢みたいだからやだ」っておばさんがいたりとかね。今はもう全部完売しています。最初はなかなか売れなかったんですけどね。隣の、アメリカの建築家と、フィンランドの建築家がつくったとこはすぐ売れちゃったんですよ。ここだけしばらく売れ残っていて。でも最近はもう全部売れて、自分たちでこうやってカスタマイズしながら使っているんですよね。共用部分は自由にみんなで一緒に使っています。

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