芦澤:ローザンヌの地域性とどんな関わりを考えられているかが伺ってもいいですか。仮にこれが違う場所で、同じようなプログラムでしたら、同じような解法でやられたかどうか、というところをお聞きしたいです。

西沢:どうですかね。やっぱりこの時は地域性で最後まで苦しんだのは、全体が長方形ということです。その長方形を打ち破ろうとすごく藻掻くのですが、最終的にはまとめきれなくて、長方形に落ち着きます。そういう意味では多分、我々の今までの仕事の中でも、一際独立的なものになったと思います。でも一方で、ランドスケープ的に繋げようとしているところもあって、相当藻掻いているのですよね。スイス的なものは、スイスでプロジェクトを1つやっていて、それがバーゼルのオフィスです。すごくいろいろ勉強になったのは、やっぱり精密できっちりつくるという高い技術ですね。あとコンクリートの美しさです。スイスの地域性だけじゃなくて、このEPFL大学ですけども、パトリック・アビュシエっていうディレクターがいて、その人が書いたコンペティションの要項が非常に野心的なものでした。大学として新しい発明を目指すという、そういう意味では今までの教室ではダメで、新しい空間が必要だということでした。新しい学習の場は何かっていうようなことが書いてあって、僕はヨーロッパの大学の情熱、そういうものをすごく感じました。そういうのもあって、こういうすごい形になったのだと思います。パトリック・アビュシエの要望があって、スイス大学の方針があって、あとは彼らの技術というところから出てきました。長方形を打破しようとして最後までもがいたところはありますね。

芦澤:なるほど。

平沼:コンペの際に、形態、構造、大変な形をしているじゃないですか。どの程度の寒暖や空気のこと、音響の問題を提案の中に盛り込まれたのですか?

西沢:コンペの時は相当どんぶり勘定だったと思います。(笑)

平沼:フフフ。そうだったんですね。少し安心しました。(笑)

西沢:だいたいどんぶり勘定で立ち向かうと、スイスとドイツでは負けます。ここで勝てたのは、大学の個性もあったし、ローザンヌがスイスのフランス側だった、ドイツ側じゃなかったのですよね。そういう文化の違いもあったと思うし、審査員もすごく理解をもってくれた。運が良かったと思いますね。

平沼:なるほど。西沢さん、もう1時間以上も経ったらしくあと10分ですと、カンペで急かされはじめてしまいました。できれば会場の方からの質問も取らせていただきたいのです。もう1作品どれに行きましょう?

西沢:これはあの、Garden & Houseで、都心のちっちゃい、仕事仲間の女性2人の為の住宅です。住宅であっても、やっぱり家に住むだけじゃなくて街に住むのがあるなと思いました。街の魅力と家の魅力が無関係ではつくれないと思い、とりあえずタイトルをGarden & Houseということで、庭と家というものにしました。ただ、すごく小さい土地で、積まないといけない。そういう訳で、こういう風に、積んでいく庭と部屋をセットにして、積んでくわけです。穴を開けてつなげて、4階建てですけど、ワンルーム空間みたいな。ただこういう部屋も庭も全て小さい形ですけれども、色々な空間をつくることであまり小ささが気にならないといいますか、窮屈感をあまり感じないものを目指しました。上に上がっていくと、どんどん街の喧騒から離れていきますので、下はビルとビルの狭間で真っ暗ですけど、上に上がっていくと明るくなっていきます。庭の緑のあり方とか、部屋の使い方とか、いろいろなことが変わっていくものです。あと小さい家にはいろんな課題がありますが、トイレもキッチンもみんな隣同士があんまり快適じゃないように思い 、昔の厠みたいな感じで、庭を通ってトイレに行くっていう形にして、小さいけれども離れをつくったり、いろんな空間をつくろうとしているわけです。こういう風に穴を開けて、上下を繋いでいるのもありますね。

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