平沼:芦澤さんこの辺りでご質問どうですか。

芦澤:はい。2つほどお聞きしたいです。1つは高さ方向のお話は今あったと思うのですけども、平面的な大きさ、割と大きいスケールかなと思っていまして、それをどのようにお決めになられたのかなということと、自然の棚田の中でコンクリートを使うことに対して何か悩まれたのか、それとも構造的な理由からシェルでいってRCということで決められたのでしょうか。

西沢:鋭い質問ですね。(笑) まずコンクリートに関しては、島に行ったときになんとなく道路とか棚田を見てコンクリートじゃないと 勝負にならないかなという、棚田の美しさとか道路の古さを見て、鉄骨造の建物だ とどうしても軽いというか、仕上げを貼っていかないといけないし、 ビスとかシールとか色々出てきて、10年20年でぼろぼろになって、勝負にならないのではないか。塩害のこともありましたし、そういう意味で鉄骨は早々になくなりました。

芦澤:鉄板とかも全然お考えにはなりませんでしたか?リブをいれるか、サンドイッチにするか…?

西沢:そのとき鉄板は思わなかったです。確かに 鉄板 、サンドイッチパネルもあるかもしれないけど、でも 細かい話になるんですが、サンドイッチパネルはやはり形をつくるんですよね。工場でそれを作って、現場に持ってくるというやり方になる。 僕がなんでベニヤ型枠をよくないと思うか っていうと、この形を目的としているというか、僕が感じていた水滴の面白さはやっぱりどんな形でもいいというとこ ろなんです。それでどんな形でもいいのに、工場で形 を つくって持ってくるという 彫刻的なもの は、ここで僕が目指すものと違うと感じています。
平面の大きさは、この敷地 でやれる最大というものでした。 1つは水平線のイメージがあったと思います。もう1つは内藤さんの作品を直島で見ていて、それは建築自ら内藤さんがやられたもので、1人で入って1人で経験して帰ってくるので した。それに僕は 感銘を受け て、それの影響もあったと思いますが、 1人で入って、中が大きくてダイナミックに鳥とか風とかが入ってくるのが内藤さんの作品でおきたらすごいと思ったのもある 。

平沼:今日この会場に一番乗りした方が高校生の方だそうです。一番前の席に座り、聞きとめている様子が僕たちのいる壇上から伺えるのですが、ずーっと、ずーと。一生懸命に西沢さんの言葉を書いていて、すごいなと思ったので、少しやさしい質問をしてみます。
西沢さんがこの豊島をやられた頃はこの周辺に何もなかったじゃないですか。実はその頃に福武さんから連絡をいただいて、僕はとてもこの場所が気になっていたのです。ちょうどオープンの翌日か翌々日ぐらいに見ておいでと仰っていただき、見させていただきました。通常関西からだと明石海峡大橋から四国に渡り宇野港から直島に渡るか、宮ノ浦まで車で行きフェリーで直島に着き、直島からフェリーに乗って豊島に行くのです。会場の皆さんも行かれた方が多いと思うのですが、豊島の港につくとレンタサイクルで向かうか、レンタカーにするか、歩くかなんですよね。(笑) 僕ははじめてだし、とりあえず歩いてみようと思ったら結構あって、1時間半ぐらい?歩いていくと、それはもう、わーん。としたのが見えてくるのです。何だこれ?と思ってどんどん近づいていくと、 内藤さんのなんともない作品に出会うのですが、僕はけっこう好きです。(笑)

会場:(大笑)

平沼:(笑)一応僕も設計者の端くれでしたので、この空間に入るとジワジワくるのですね。悔しいというか、すごい!って、思ってしまいました。そして帰りに歩くとちょっと大変だと思って、福武さんからこの小さな島には1台だけタクシーがいると聞いていたので、連絡をして迎えに来てくれとお願いしました。

西沢:そうそう。よく平沼さん知っていますね。(笑)タクシーが 二台あって、 でも 運転手さんがひとり だそうですね。

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