平沼:具体的にどんな空間をつくりたいと目指されていますか?

鈴野:そうですね、今は建築と家具とか、プロダクトとかの中間がすごく面白いなと思っています。同時に、考えて決定するとか。元々の背景は一緒で、勉強している時に建築やインテリア、プロダクトに、分かれているだけなので、それを一つに捉えていけないかなと思っています。

平沼:今のプロジェクトでは分かりやすいんですけど、人との関係ってどんな風になっていけばいいな、実は思っていますか?

鈴野:建築は、強いだけじゃなくて、フラットに色んなものがある中で、気づいたらここすごく良い空間だな、気持ちいいだろうなって考えられるようことを思っています。人によっていろんな使い方が違って、同じ空間の中にいても、ひとつの事をするための空間ではなくて、みんなバラバラしていても、気にならない空間とかがいいなと思っています。

平沼:次に、有名な器の話しを聞かせてください。

鈴野:これは、販売しているプロダクトとしては、最初のものです。「空気の器」という紙から出来ているプロダクトです。印刷会社って紙の箱や名刺をつくっているようなところで、会社を待っているだけでどんどんコストがかかって、価格競争になるんですよね。そこで今回、自分たちから発信していきたいということで、萩原修さんというプロデューサーに出会い、5人ぐらいのデザイナーを呼んで、色ということをテーマに紙製のプロダクトを開発することになりました。そこで僕らのテーマが緑だったのです。トクショクシコウ展という展示会で、5人のデザイナーに色を割り当て、僕たちは「緑」でした。トラフのホームページで緑をよく使っているので、緑でやりたいという単純な理由です。

芦澤:これは、紙ですか?紙がこういうリボン状のものになっているのですか?

鈴野:そうですね。

平沼:かなり早い時期に、森美術館のミュージアムショップに置いてあって、おもしろいなぁって思って購入しました。そのときにトラフさんの事を知りました。これ何年前ぐらいからやられていましたか?

鈴野:ずいぶん経ちますね。
例えばイスでも、プロダクトって最初すごく難しいと思っていました。敷地がないことにすごい恐怖を、覚えていて、敷地があれば、そこから条件をなるべく拾って。イスとかだと、どこに置かれるか分からない。こういうプロダクトもそうですけども、なにを手がかりにして行こうかなとなったときに、家具なんかでも敷地を、逆に与えてしまったりとか、バルコニーを敷地として、そこで使える何か、という風に考えます。そうしないと、ほんとうに人の好みになると思います。この時は、敷地を与えるというか、ある意味こう条件を狭めることですけども、自分で条件を与えるわけですね。緑は条件ですけども、特色が展覧会のテーマだったのです。特色って、印刷用語であるんですけども、なんだろうって何も知らなかったので聞いたら、色を混ぜられることだよと言われて、建築的に置き換えると、色は簡単に混ぜて、よく壁に塗るじゃないですか。じゃあ特色って特別な色と書くので、普通の印刷とはなんだろうっていうと、ドッド状の青と黄が干渉しあって緑に見える、それは面白いなと思って、黄色と青で、緑をつくることを自分の中で条件にしました。プロジェクトひとつひとつにユニークネスをどれだけ引き出せば、特別なものになるかなと思い、逆にそれを敷地として捉えました。紙という物を、なるべく二次元のものを三次元にしようというテーマをもって、10mmぐらいのものから、ずっと切っていったら、0.9mmになると、重力と紙の可塑性、折れたらすこし折れが作っているバランスがちょうど保たれたんです。今は子供と一緒にワークショップをして、絵を書いたり、はんこを押したり、アーティストとコラボレーションしたりしています。

平沼:さっき言っていたのはこの、ワークショップ?

鈴野:これではないです。これはバガボンドの井上雄彦さんが、空気の器のために、書いてくれたものです。こういうものはスタディの過程ですけど、ここで気づいたのが、硬い紙のほうが切れなくていいかなあと思って、紙にも牛乳パックのようなものがあるので色々試しました。同じくらいの強さで引っ張ると、接合部分が切れようとするのですね。こういうものの方が、ゴムのようにしなやかに伸びで逃がしあう、建築で言うとこの免震構造みたいなものです。これは黄色と青が、どうやったら混ざって見えるようになるかなと考え、光が黄色に反射して、青にぶつかって、緑になるんですね。

芦澤:これスタディですよね?

鈴野:はい。設計図みたいなものを書いて、プリントして、40個ぐらい切って、形を決めていきます。器のように膨らむために、同心円状にだけじゃなくて、少し工夫がされているんです。

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