芦澤:白い仕上げは何でしょうか?

高崎:鹿児島とか宮崎のシラスを漆喰にしています。世界中、シラスは無尽蔵にあり、役に立たないので皆さん関心がありません。それをなんとか実用化するために、地域の人に、農業をしていない農閑期シラスを生産してもらう、そういうシステムを作っています。さらにシラスは空気を綺麗にします。

平沼:ご自身の建築基準や空間をどのように導かれていますか。

高崎:基本的には自分のオリジナリティを残して、次の世代にバトンタッチしたいと思っています。1週間に1つの建築の型を作ってあげるとか、そういう意志が強いです。

芦澤:先ほどコルビジェの話をなされて、コルビジェにしてもミースにしても、モダニズムの人は、非常にわかりやすい共有言語を作って、みんながコピーして、今の都市空間ができあがっていると思います。それをすごく批評的に見られているのは分かりますが、例えば高崎さんの持たれている解法が今後普遍化していく、そういう興味は、お持ちでしょうか。

高崎:建築は、文学と同じで普遍化することはないと思います。ただ色々な多様性が存在するという状況の普遍化はあるかもしれませんが、僕はそれが普遍化ではないと思います。それは、僕はコルビジェもミースも好きですけど、あれは一種大衆向けのプロパガンダでマニフェストです。むしろ私の建築は、普遍化うんぬんではなくて、違った視点で設計活動により生み出されるものです。ただ私たちのモットーの「物こそ人なれ」、物に魂を吹き込むということは作品作りにおいて普遍的な真理だと思います。

芦澤:一部の人に刺激を与えられればいいっていうのがあるのでしょうか。

高崎:小学校の頃、中国の詩の中に自分はそこらへんのごろた石だ、そのごろた石が何百年するうちに、ごろた石ではなくて実は黄金じゃないかと目覚める人が出てくるという話があります。
そういう風になるといいですよね。

平沼:いろいろな分野に影響を受けておられると思うのですが、自分が1つその選択するのならば、どういう分野に一番、影響を受けられていますか。

高崎:哲学と宗教はものすごい子供の頃に関心を持っていました。一番初めに関心を持ったのがキリストです。彼はアジアの西の生まれで、アジアの東に生まれた私は、このキリストとは何だろうかと、すごく関心をもちました。そういう宗教や哲学はずっと若いころから親しんできました。親の介護しながら50歳を過ぎたら自分の役割は何かと、全部仕事を断り、自分の中で、ずーっとそういう思索をました。そういう時にいっぱい勉強して、53歳くらいの時から先ほどの住宅を設計し、自分の考えを大衆に投げかけたいっていう思いが強くなりました。大衆に向かって、建築を通して、自分の本業を通して、対話するのが重要になってきました。建築の中にそういう哲学とか文学、思想がきっちりはいってくるといいですよね。

平沼:あの形態を建築設計において実現化させるのは、すごく大変じゃないですか。

高崎:すごく大変ですよ。図面を書いたり、模型を作ったりするのはしんどくて全身全霊で打ち込むと頭がはげます。
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