平沼:なるほど。そんな谷尻さんの今後の建築、どんな建築をつくりたいですか?それは用途でもいいし、こういう構造でもいいですし何かありますか。

谷尻:新しい建築を作りたいですね。

平沼:それはどういう意味で新しいのですか?

谷尻:僕が思う新しいは、見たことがないものではなく、少し先の未来をつくるっていうことをよくいっているんですけど。もうすこし構想力が良くなるっていうことでも良いと思うんですよね。
それは十分な新しさになっていると思って。そういう意味では、やらしい言い方をすると、規制概念を皆さんが持ってくれているので、その既成概念を利用したことによって、新しさが定義しやすくなっていると思っているので、皆さんの思い込みみたいなものを少しこう溶かして、拡張していくことが新しさにつながると思っています。圧倒的に新しいと、人との距離ができて、理解できぬ新しさになるような気がして。そういう意味では、なんとなく懐かしい新しさというか、そういうことができたらなと思っていますけど。      

平沼:懐かしい新しさですか。

谷尻:はい。

芦澤:今の人たちが持っている、既成概念とか、に対してはかなり不満を持っていますか?

谷尻:不満というよりはもっと良くなるなっていう感覚を持ちながら見ていますね。

芦澤:じゃそれは例えば、どんどんどんどん皆提案していって、ものすごい皆がハッピーになって、既成概念そのものが、すごく受け入れられるようなもの。谷尻さんにとっても誰にとってもなって欲しいと思いますか?

谷尻:そうなると考えなくなるような気がするので。変な言い方をすると、新しい既成概念を作らないといけないんでしょうね。あの、制約はずっとあったほうがいいと思うので。

芦澤:ストレスはちょっとあったほうがいい。

谷尻:ストレスは常にあったほうがいいと思っていますよ。

芦澤:えぇ、えぇ。ちょっと前の質問に戻っちゃうんだけど、谷尻さん、その同世代の建築家だとかと議論することってあります?あるいはそういう、親しい仲間とかいます?広島の方って結構上の人は、皆集まっている感じはしますけど。僕らの関西もそうなんですけど、建築家同士が集まって、結構議論するっていうのが、昔は僕らの先輩たちは、大阪でも広島でも、あったと思うんですけど、谷尻さん自身はどうなのかなと。

谷尻:そんなにいつもやってる、って感じではない気がしますね、建築じゃない人に会ってるほうが圧倒的に多いかな。

平沼:その議論はしていったほうが良いっていう、意見ですか?

谷尻:どうなんですかね?僕らもそういうのが無くなるとまずいっていう思いはあります。

芦澤:まったくなくなるとまずいし、こういう議論でもあったほうがいいし、ただ、毎日建築家同士で集まって、建築の話をしているのも、意味はないと。あまり意味はないというか、バランスでしょうね。

平沼:なるほど。こう、二ヶ月に一回こんな機会があるから、聞けるじゃないですかいろんな人の作品を。

芦澤:適度ないいバランスかもしれないですよね。

谷尻:そうですよね

平沼:でも最近確かに無くなっていますよね。

芦澤:ない。ない。ないですね。

平沼:谷尻さん。最後の質問です。月並みな質問ごめんなさい。来て頂いている人にいつも聞いている質問です。ちゃんと答えてくださいね。全部あとで本とかにもしなった時に大変ですから(笑)、建築家とはどんな職業ですか?

谷尻:建築家とはどんな職業ですか?どんな職業?どんな職業なんでしょう?(笑)僕はいつも言っているのは、環境作りって言うこと話をしていて、それは、建物作るっていう意味での、風景を作ったりする意味の環境も含め、人と人との環境もそうだと思うんですね。現場で、いろんな人が関わるので、その人たちがどうやればこう、気持ちよく仕事をしてもらえるかだとか、そういうこう、いい、良い環境作りをするってことを、心がけながら仕事をしたいなと思っています。良い空気まとっていれば、良い事がおきるじゃないすか。それはやはり、いい環境が常に、どういう空気がそこに孕んでいるのかってことを、すごく意識しながら、仕事していますよね。ついついスタッフは見積もりなんか、数字ばっかり突いて、工務店さんに嫌がられるじゃないすかでも、なんでこの建物を作る意義があるのかってことをプレゼンしたほうが、あ、じゃあ作ろうよっていう空気を一緒に共通で持てた時に、実はお金を下げる方法を一緒に考え始める瞬間があったりするのです。やっぱりそれも、環境を作るって事だと思うんですよね。

芦澤:いい人ですね、谷尻さんは。すごく良い人。

谷尻:良い人プレイをするようにしているんですよ。良い人じゃないと思うんですけど、良い人のプレイをきちんとしないとなって思っています。

平沼:はじめてあった時から良い人だったじゃないですか。

芦澤:それ、良い人プレイ?

谷尻:(笑)そういう事しないとなってずっと思っていれば、そうなるじゃないすか。

平沼:僕ら広島で、うまいとこ連れて行け!って言ったら、「はい!仰せのとおりに」みたいなことになっていましたよね。(笑)

谷尻:(笑)先輩には逆らえません!

平沼:そう、今回もね、無理やり呼ぶじゃないですか。そしたらもう「仰せのとおりします!」みたいなね。谷尻さん忙しいのにすみませんでした。(笑)

谷尻:いや、とんでもないです。(笑)

会場:大爆笑。

平沼:今日は大阪まできていただいて、ありがとうございました。

谷尻:ありがとうございました。

芦澤:ありがとうございました。

ニコル・松本:ありがとうございました。

会場:(大拍手)

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