平沼:では、早速にプロジェクトを紹介してもらってもいいですか?

谷尻:はい。これは普段、考えているようで考えていないので、しっかり考え方を、どうやって考えるかってことを意識することをいつもやるようにしています。名前にすごく興味があって、なんだか、結局世の中名前が支配しているんだなという風に思うことがあります。こう、コップっていう名前があると飲み物飲む道具だけになるんですけど、名前を無くすと、なんか、花をたてて花瓶になったり、例えば金魚を入れると水槽になったり、機能が拡張されるんですけど。名前で使い方が決まっているので、住宅においても、いろんな建築においても実はそうなんだなって気付いてですね、名前を取って、何をする場所なのかというところから、設計をいつも始めています。

芦澤:じゃあプランには、室名は書かないってことですか?

谷尻:結果的に書けば行為になるじゃないですか。逆に言うと、わざと名前を付けることによって、
そういう使い方を誘導することも出来ます。

芦澤:じゃあ、それは結構自覚的に部屋の名前とかをつけている?

谷尻:部屋の名前を、そうですね、ある種コントロールしています。

芦澤:コントロールしているんですね。

谷尻:っていうほうが正しいかもしれないです。ギャラリーって名前を付けた瞬間、絵を飾るとか、作品を飾らないといけない空気が漂うじゃないですか。だから、そうやってなんとなく、スタジオって名前付けると、写真取る場所だってみんな思い込む訳で、わざと名前をなくしたり、付けることで、その空間の、起きることを、考えているというのは、あると思います。これは、素材もすごく興味があって、世の中全部、素材なんじゃないかと思っています。

芦澤:、素材の集合体ですもんね。

谷尻:そうですね。知り合いの作家さんが拾ってきたもので、全部作品を作っているので、そんなものを、割と日常、歩いているときに、街を見るようなことをやっています。

芦澤:じゃあ建築をつくるときでも結構、素材に関しては相当意識したりしているのですね。

谷尻:意識したいと思っているのですけど、ついカタログから選んじゃうんですよね。

平沼:(笑)ええ。

谷尻:そこに出来るだけ、はまらないようにしたいな、という意識だけは持っているんですけど。
まだまだこれからです。あと、世の中がどんな感じかな、みたいなのにすごく興味があります。
これが結構、世の中の物語っていて、なんかこれカフェじゃないですか。でもみんなパソコン持って仕事しているで、オフィスって呼んでもいいと思うんですよね。でもオフィス設計するときに、こんなオフィス設計できるかっていうと、なかなか出来なくて。そういう意味では、先程の名前のこととか、結局、行為が空間に名前を付けるんだなと思って。これも、美容院ですけど、鏡が無くても美容院が成立しているのに、なんか美容院を頼まれると鏡の数から始まっている気がして。

芦澤:そうですね。そこで規制されている、規定されちゃうからね。普通で言うと。

谷尻:はい。そんなことも無くせたら、無くすというか、一度本当は考えないといけないんだなと思ったりしています。それで、そういうことを実験的にやろうと思ってですね、シンクというものを自分の事務所の、ひとつ、こういう背景のような四十坪の空間があるんですけど、ここは名前の無い部屋っていう風に言っていて、行為が空間に名前を付けるっていうコンセプトで、ゲストを招いて、例えば、作品を紹介してもらっています。

芦澤:どのくらいの頻度でやられているのですか?そのイベント。

谷尻:月に1度やっています。打ち合わせにつかったりします。使った瞬間、なんか会議室になりますし、作品飾ったらギャラリーになりますし。これ為末さんが来て、メダル取ったときの映像とか流したらスタジアムみたいになったんですけど、写真撮り忘れで、スイカ割りの写真しかなかったんですけど。あと、アジアンカンフージェネレーションの後藤さん来てもらったときは、なんかライブハウスになりましたし、野村ゆうじさんが来て頂いて、なんかレストランになったり、柳赤六さんが、講座を開いてもらって寄席になったり、美容院になったり、みたいなことをやっています。そうすると、何と何があるとライブハウスを決定付けられるかだとか、何があれば、こう、ギャラリーになるのかみたいなことが、割と、こう、見えてきます。そんなことを毎月やっています。

芦澤:じゃあ、先いきましょうか。

谷尻:はい。これ、自分の興味でいろんな、星座っていうのは意味が無いものを集めるっていうのを星座っていう風に言っているのですけど、意味が無いものがたくさんないと、意味のある星座が見つからないので、割とこうインプットをたくさん日ごろからやって、どうでもいい画像をいっぱい集めているんですね。これも名前がなくなるとこう機能が増えるようなことですと、こういうキャンドルスタンドもあるもので作れるんだなとか。水着は日焼けしないものじゃなくて日焼けをデザインしているっていう逆説的な考え方もあるんだな、とか。

芦澤:ああ。

谷尻:これはなんか全然よくわかんないんですけど、こういうグラデーションって、世の中に色が必ずあるんですけど、例えば洋服屋さんとか本屋さんが色でカテゴリー分けして本屋を作るとすごい美しい風景が作れるんじゃないかなとか。そうやって関係ないことなんですけど自分にとってはすごく大事なことに翻訳癖をつけて生活している感じですかね。

芦澤:こういうネタはどっから集めるのですか?

谷尻:インターネット上でうろうろしてとかですね。

平沼:谷尻さん自身が探されるのですか?

谷尻:はい。これはホッチキスの芯だけど街に見えるとか。見立てるってことってすごく日本的だなと思ったり。これは本物の人間に油絵描くとリアルがアンリアルになって、アンリアルがあることによってリアルがなんかこう、すごく前に出てくるんだなとか。

芦澤:もしかして1日のほとんどこれやってるわけじゃないでしょうね?

谷尻:あ、違います。はい。たまに、夜中にやってますね。こういうものとか。こういう字がないのに伝わるとか。機能を与えることもデザインなんじゃないかなとか。どんどん、今までカテゴリーが別々になっていたものが、これ醤油さしが一緒になった箸なんですけど、だんだんバラバラだったものが境界線を越えて、ひとつになってく、なんか現代社会を物語っているプロダクトだなとか。どうでもいいけど面白いなとか。
これも、この後どうなるのかなっていう想像力をかきたててくれる画像だなとか。想像するってあんまりだんだん減ってるから、想像力ってすごい大事だなとか。これは意識しないとわからない時計っていうのも。やっぱり、みんなが無意識なことを意識化することが何か僕ら設計する上ですごく大事なことなので、こういう無意識を意識するっていうのをこう集めてみたり、これも意識しないと開かない鍵とか。これも、無意識です。意識し始めるとか。あとついうっかりルールにはまっているけどこういう新しさがあるんだなとか。これオフィスチェアって呼んでもいいなとか。これもなかなか斬新なプロダクトだなとか。これなんか、こういうことが一番僕らがやるのに大事なことなんじゃないかと思っていて、1人の考えたことがなんか皆がこうハッピーになるようなこういうことやんないといけないなみたいなこととかを大体集めたり・・・。これらは一部ですけどまだまだたくさんあります。

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