平沼:次の写真は…これ誰だろ、あ、小嶋さんだ。

倉方:小嶋さんですね。ん、小嶋さんはどうでした?

芦澤:僕はわりと同じ方向見ていて共感しましたね。環境シュミレーションをしながら、建築を探っている。そういう意味では、現代的なアプローチで、建築を捉えようとしているという印象です。

平沼:僕が率直に感じたのは、C+Aじゃなくて、もともとのシーラカンスだった時代のあの破綻しそうだったギリギリの前衛的なつくり方が薄くなっていたというのが、残念に思ってしまいました。いつまでも期待をしている僕にも問題があるのですが、やっぱり、なんとなく、保守的なんですよ。どのプロジェクトを見ていても、何かの結果を見せて、これでいけますよね、っていうやり方が前に出てしまっていて、まァピースセンターを今つくっていい訳でもないでしょうし、難しい部分があるのは承知で、でも、なんかこうちょっと無理矢理感のある、あのつくり方がなんか無くなってたのがちょっと、残念でした。僕らが学生だった頃には、かなりの期待が集まっていた印象があったからせいだと思いますけどね。

芦澤:前衛的な建築家って今いますか。

倉方:今、前衛的な建築家は誰?

平沼:前衛か。でも、登壇された建築家では、妹島さんは間違いなくその一人でしょうね。

倉方:あー

平沼:海外には、ザハであったり、コープヒンメルブラウであったり、ゲーリーもはじめまだまだ沢山いますね。でも、日本でいう前衛的な建築家は、やっぱり少なくなっている気さえします。

芦澤:前衛がだいたいもう、ヒンメルブラウにしても、妹島さんにしても、みんな、大家になってしまっているじゃないですか。

平沼:えっ、そうですか?

芦澤:同じスタイルをとっていくと、前衛さって…僕は大分、こう、なんか…う、薄れる、味が薄れる。感じがしますけどどうですか?

倉方:芦澤さんが考える前衛さってどういうこと?

芦澤:前衛さ、現代に対してもうちょっと先のものを、みしてくれることかな。

倉方:うーん。あー、なんか逆に言うと、こうちょっと異様なものとかね。

芦澤:まあ、そうですね。別の言い方をすると、異様なものですね。

倉方:なるほどね。

芦澤:受け付けられないような感覚が残るものですね。

倉方:うーん。あー。でも何か気になって、何かあるんじゃないかと思うようなゴリっとした感触のみたいな。

芦澤:そうですね、

倉方:まあそういう意味では、ある形態を繰り返すとそれがスタイルになっちゃうからね。

芦澤:うーん。

倉方:もうその驚きはないから、前衛ってのは前衛を繰り返すと前衛じゃなくなるって、さっきの話になると。

芦澤:そうですね。

倉方:なるほど。この次が妹島さんですか。
平沼:会場に来てくださった人の数が、とにかく凄かったですね。
今日の、2倍くらいは入ってたんじゃないですかね。

倉方:すごいねー、でも、妹島さんですからね。
どうでした?妹島さん。

平沼:いつもそうですが、僕や芦澤さんの特権みたいなのがあって、勇気をもてば横にいている訳で、なんでもお聞きできるわけですよ。妹島さんもそうだったし、他の建築家の方もそうでしたが、何でも聞いてね、くらいの気さくさで話してくださる訳です。だから僕たちは、自分たちの特権を活かして、素直に聞いてみることにする。(笑)そんな中でも、妹島さんは対話をきちんとしてくださった印象が残っています。

芦澤:そうですね。妹島さんがこの巨匠クラスでは一番僕たちの質問に真面目にちゃんと答えてくれて話をしてくれました。偉ぶること一切なくです。

倉方:あーそうだったのですね。

芦澤:ちゃんと目線を合わせて話してくださった感じですね。
でもやっぱりすごいですよね。もうミースの極限、近代の極限ぐらいまでいっているような感じがあったな。ハイパーモダンぐらいいってんのかな

平沼:そんなに褒めちぎりますか?(笑)

芦澤:や、これ実はほめてないんですけど。

平沼:あーそうですか。

芦澤:全然ほめてないんですけど。

倉方:えっ、その先はないよっていうことを言っているのね。

芦澤:はい。…という印象を僕は持ちますが。妹島さんの後追いをしてたら、絶対危険です。

倉方:うん。

芦澤:若い人や、学生も絶対やめといた方がいいですよね。

倉方:芦澤…イズムを…芦澤イズムをなんか関西に根付かせようとしてますね。

平沼:はははっ(笑)。そんな思いが芦澤さんにあったのですね。藤森さんには、かなりすかされてしまいました。

芦澤:いや、相当すかされましたね。

倉方:なんで?

芦澤:まったく相手にされていませんでした。(笑)

平沼:その言い方に悪意があるな。(笑) いや、そんなことはないですよ。僕は今まで、藤森さんの建築をノーチェックだったのですが、お誘いをするくらいから、本を買いあさったり、いくつかを見にいったりした中で、かなりこう作品を見直したというのか、印象深かったなっと思っていて、このシリーズで一番影響を与えてくれた人は藤森さんでした。

芦澤:いや、僕が質問投げても、もう肩すかし状態で。

倉方:ふはは。(笑)

芦澤:取り合ってくれませんでしたね。話はおもしろかったですけど。
もう、ずるいですよ。

平沼:まァ、作品みていても、いい意味でずるいな、と建築家は思ってしまいますね。

倉方:ああ、そういう意味ではずるいですよねー。


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