平沼:んー。貴重なお話をしてくださってありがとうございます。
それではこの辺りで、会場から質問をいただいてもいいですか?

坂 :はい、もちろんです。

平沼:どうですか?お二人くらいです。…あれ? 手が挙がりませんか?

坂 :やっぱり日本で講演会をやると、遠慮されますね。でもやっぱり、どんどん日本人が前向きに出て頑張ってもらわないと、日本の将来は無いのです。皆さんもっと率先して頑張ってほしいのですよね。 昨日も新聞に出ていましたが、過去3年間で、アメリカの大学院で修士・博士号を取ったのは、中国人が1万4、5千人、韓国人4千人、インド人5千人、日本人は890人ですよ。

平沼:日本人として寂しいですね。えっと、質問出ないですか? あっ、出た。

会場1:すみません。設計されている建物が、バックミンスター・フラーに似ているなと思ったのですが、好きですか?バックミンスター・フラー。

坂 :うん、大好きです。うん。すごくいい質問だと思います。僕、大学時代に好きだったのが、バックミンスター・フラーと、フライ・オットーだったんですね。なぜかというと、建築の歴史を勉強すると、どんな時代でもその時代の流行というか、スタイルがあるじゃないですか。もちろんバロックだって、デコンだって、それかポストモダンだって、いろんなスタイルが時代ごとにあって、みんなそれに影響を受けるわけですね当然。でも僕は人の影響を受けるのがすごく嫌で、その中で建築の歴史を見ていて、その時代の影響を受けずに建築をつくっている人、それがフライ・オットーであり、バックミンスター・フラーだった。つまり自分で構造のシステムや材料の開発をすると、その材料の特性に合った構造体などをつくって、時代のスタイルの影響をそんなに受けずに済むんですね。だからいつか自分なりの構造システムとか、材料を開発したいなーっていうのは学生時代からずっと夢に思っていました。だからバックミンスター・フラーとか、フライ・オットーなどは大好きだったです。

平沼:みなさん、質問、大丈夫ですか? 
坂さん今、意外とやさしく答えてくれたので大丈夫ですよ。

坂:(笑)

芦澤:(笑)

会場:(笑)

会場2:今日はお話しくださってありがとうございます。坂さんは難民キャンプなどの仮設計画に関して色々なことをされてらっしゃいますが、日本以外の社会情勢が安定してなかったりする中東やアジア、アフリカでは、失ったわけではなくて、住宅がそもそも無くて、住むところが劣悪である問題に直面している人たちたくさんいると思うのですが、そのような人に関しては、日本人の建築家としてできることや、お考えをお話しいただきたいなと思っています。

坂 :もう、なんか用意されていたような大変いい質問ですね。(笑)えへへ。
あの、実はそういうことを真剣に考えていて、ある大阪のプレハブメーカーと大プロジェクトを計画していましてね。それはね、開発途上国の問題だけではなくて、これから日本の仮設住宅をどうするんだという問題が大きくあるんですね。今回もいろんなメーカーの方が仮設住宅を作ったように、もうプレハブ業界だけでは仮設住宅を作りきれない。これからそういう状況はもっともっと悪くなると思うんです。今度また地震があったときにどうするのか。もうそういう準備をしなくてはいけない。それから仮設住宅をもう少しアップグレードさせなきゃいけない。ただ、たまにしか必要ない仮設住宅の部材をいつも作ることや、ストックをすることは不可能です。そこで考えたのが、途上国のスラムなどを良くするためにローコストの住宅をその開発途上国の人がつくって、そのような住宅は世界中の途上国で需要があるので、それを供給するようなシステムや工場をつくる。そしていざ日本でも中国でも、地震あった時だけは、「注文があったの、ごめんなさい。ちょっと今大災害なので。」と通常の供給ラインを止めて、被災した国に送るようなシステムをつくろうということを今やっていまして。来年の3月11日になると思いますが、お披露目の発表会をする予定です。そのような発展途上国のスラムなどの、ローコスト住宅の開発・供給と雇用。それから日本などの国の仮設住宅の供給の、両方を兼ね備えたシステムを作ろうと思って、今協力して、開発やプロジェクトを進めているところです。

会場2:ありがとうございます。

平沼:どうですか?もう大丈夫ですか?あ、いきますか?

会場3:海外の被災地に行かれて、実際にいろんな建築物やシェルターなどを建てられてきていると思うのですけれども、お話の中にアポなしで突然行って、話をしてうまくいったというのがありますけれども、僕なんかだったら話がうまくいくかどうかもわからないので、アポなしで行くのがすごく恐いのですが、なぜアポなしでもとりあえず行ってみようと思われたのでしょうか?

坂 :あの、実はアポを取ろうと思ったのですが、取れなかったんです。だから、まずはUNHCRの日本事務所があるので、そこに手紙を書いて訪ねていったんです。そこでジュネーブにある本部のこの人に手紙を書いたらいいと、担当者まで教えてくれたのですが、中継ぎをしてくれなかったので、ジュネーブの担当者に手紙を書いて3か月待ちましたが、返事がなかったのです。それで、もうこれ以上待てないと思って、アポなしで行きました。でも電話したら運良くそこにたまたま日本人の研修生の方がいて、たまたま電話に出て、それでその人がほんとにうまくアポをアレンジしてくれて、引き合わせてくれたんです。本当に偶然なんですけどね。だから、アポ無しで行ったわけではなくて、アポを取ろうと思ったけど取れなかった。だけど、やっぱりね、まずは行動することなんですよ。行動すれば何かが起こるんです。大体普通の人は、行動する前にこんなことしたら失敗するんじゃないかとか、こんな問題があるんじゃないかとか先にいっぱい考えて行動しなくなっちゃうんですけど。僕の場合は、まずは行動をして、そのあとに問題を解決すればいいやと思ってるんですね。

会場3:ありがとうございました。


>>続きへ


| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | NEXT