藤森:次、私の処女作が、あそこに見えています。これは僕の生まれ育った村で、神長官守矢史料館っていうのがありまして。こっちはロンドンで造ったやつ。この足に使う木を切るのに、場所がなくて大変だったの。これは美術館の中で造ったものです。
これは台湾の湖の畔。この湖をもっている方が、そこへ茶室を造ってほしいということで、ボートの茶室を造ったの。このボートは全部コンクリート船ですよ。コンクリート船ってね、実はコンクリートの歴史の上では、コンクリート建築より1年古いんです。フランスの特許がある。コンクリート船って実はずーっと造られ続けています。素人が造るに良いし、その技術のことを知っていましたから、コンクリート船を造って茶室にしたの。重いから人が乗ってもあまりグラグラしない。つくったコンクリート船を下すために、この車路から全部造らなくちゃいけないので、まぁ大変だったんです。
構造的にも用途上も大丈夫だったんですけども、風が吹くと、なんとこの屋根がヨットの帆と同じで、風に吹かれてあの藪の中へ突っ込むんですよ。だから風が吹き始めると、乗ってる人が一所懸命漕がなくちゃいけないっていう思わぬことがおきまして。で、先程の高過庵より高い茶室を造ってほしいっていわれて、あの右のやつを造った。

平沼:これ何メーター位あるんですか?

藤森:床下で7メートル。世界最大の竹というのが台湾にあるんですよ。ところが台湾の人もほとんど知らないんですよ。これは20メートル位のもので、太さ30センチなの。これで建築を造ってみようと思って。でも心配だから5本使ったの。全然揺れなくて面白くも何ともなくて。だからね、3本位で丁度良かったのかなっていう気がしております。

平沼:こういう配列なんですね。

藤森:そうそう。こういう状態で。

芦澤:例えばですけど、生きた竹でそのまま造ろうとか、そういうのは邪道ですか?

藤森:ツリーハウスとかには全く興味がなくて。やっぱり建築を造るっていう…。
ツリーハウスって変だよ。木は木のままで置いといてあげなさいって。家なんか造って木を痛めるもんじゃないって。ツリーハウスは全然興味ないしやらない。そういうところは僕は割合理論的なんですけどね。ツリーハウスと人間の造るものとか、ツリーハウスとか曖昧なもんだからやらないとか、そういう所は最初からもう綺麗に分けてやってるんですよね。
次、これはね、一昨年造った「空飛ぶ泥船」っていう茶室です。このシリーズに今非常に興味があって。最初は2間の長さで、クジラみたいになると思ったの。けど、工事中に不安になって1間半にしたんですよ。その結果、クジラがフグみたいになってしまってですね、僕としては不満があるんですけど。で、今2間のやつを造り始めていて、家1軒を吊ると日本では法規が通らないので台湾ですけど。それが今僕の一番の楽しみですね。

平沼:それはクジラになっていますか?

藤森:いやそれはね、出来るだけ家型に近くしたの。完全に家型にして吊ると、ほんと夢のような、ちょっと空飛んでいてもおかしくないなって感じで。家型にすると絶対、一瞬だけど変だと思うので、それが楽しみでやっています。
これは今、あの高過庵の横に移しています。だから私の故郷行っていただくと、神長官守矢史料館と高過庵とこれが3つ。

平沼:小さなミュージアムみたいですね。

藤森:そう。それが私としては不安があって、70戸の小っちゃな村のこの畑に私の建物が3つ出来てるんですよね。景観上ね…。でも幸いなことに村の人も喜んでくれていて。
だからまぁ何とか、あまり村の景観を壊さずに。これはあの柱のまま、高過庵の下の畑に移っていますので、ぜひ行っていただければと。
今の泥船は、10人位大丈夫。高過庵はね4人位が限界、ただ女性だと5人位大丈夫ですけどね。外国人が乗るともう不安で。

芦澤:結構揺れそうですけど、

藤森:高過庵の揺れはものすごい不安なんです。こちらの揺れはゆりかごと同じで、誰も不安がらない。人間の本能的にこういう揺れはね、心地良いんですよ。

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