芦澤 : 青木さんのお話しを聞いていて、つくり方を敢えて変えられていく、飽き性なのが青木さんの個性なのかなと思うのですが。一方で継続的に同じやり方を続けていって、自分らしさを確立するやり方があると思うんです。磯崎さんはご自身でつくられたものを否定していかれますよね。その辺りはどう考えられていますでしょうか。

青木 : 飽き性ってことはないと思うんですけど、自然に前にあったことと同じようなことを次やっていたりということがあって。単に面白いこと、刺激のあることをやりたい自分が、どうなるかわからないことをやりたいというのがありますよね。だからスタイルをつくったらすごくつまらなくて、やっている意味なくてやめちゃうと思う。いつもわからないことをやりたいってことが目標ですね。磯崎さんは、そう言う意味では似ているところもあるんじゃないかな、刺激がないとダメなんだそうです。設計していると政治的問題に引き込まれる。僕はそれが嫌いですけど磯崎さんはそれが好きで、それも含めて刺激って言っているから刺激の対象がちょっと違うけど似たところはあるのかなと思いますね。

平沼 : 最終形をなんとなくイメージしながら設計をする。普通はそっちのタイプの人が多いのではないかと思うんですけど、今日お話しをお聞きしていると、違うものを目指されているのかなと感じたのですがいかがでしょうか。

青木 : いや、あるよ。あるけどそれは言葉で言えないし、その空間ができあがってそこに自分が行けばこんなふうに思うんだろうなっていう感覚はあるの。その感覚ができるためにはどうしたらいいかって考えるっていうのかな。あるいはその感覚がすごく重要でその感覚が答案なんですね。案をつくって、その案をみて、その感覚に近いかどうかっていうチェックをしているんですよ。これに近くなければボツだとね。だからどんな建築をつくりたいというのは変わらずあるんだけど、それ自体を言葉にできない。けどそうしたら建築がつくれないから、そのひとつ手前の共有できる方法論をつくりたいんです。

平沼 : なるほどです。すみません、時間が残り少なくなってきました。
ここらあたりで会場から質問をください。二人もいけるかな?

会場1:今日はお話しありがとうございました。聞いていて不思議だったのは三次のホールなのですが、決定ルールみたいなものがある形式でやると良いことは、そこに戻って考えることができるということがありますよね。三次の場合は設計期間が短い割に、ホームページでいろんな意見を聞き入れてやっていこうとされていて、そのときどのように対応されていかれたのかが不思議だったんですけれども…。

青木 : 不安なんですよね、こういう設計の仕方するとね。これでコンペを通っているんだから、5m上げるってことはもうしょうがないでしょ、全体に長方形の四角いものしかないから基本的に四角い箱でつくっていくしかないねぐらいしかなくて、あとはどうなるかわからないですよね。でもね、こっちが自分で枠組みつくってしまっていて住民に聞くのは、ほんとはしたくなくて。ほんとはもっと時間があってね、いろんなことを聞いて、じゃあこれどうですかってやっていきたいんだけど。何にもこっちが守るものなしでどこまでできるものかっていうのは最大の冒険なんだからさ。聞くなよそれ、すごい不安なんだから。うん、だけどできると思う。

会場1:楽しみにしています。

平沼 : ありがとうございます。いそいで、もう一人お願いします。

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