青木 : 色んなことがあって、設計が進んでいったんですね。このイチョウの木が、これを目指せば入り口という意味で、こんな感じにしました。構成がだんだんできてきていて、これで見ると、これは屋根を外したところだけど、ここに体育館、体育室が地下に潜っていますね。それが箱状になっています。構造が他と全く縁が切れていて、周り何にもなくただ箱が置かれているっていう状態。つまり地下二階までつくって、そこにポンって置いてあるそういう体育室のつくり方なんです。そうすると、周りと体育室との間に谷間みたいなスリットが生まれます。そこを通して他を見ると光が落ちてくる。地下だけど光が入るようにしようっていう考えで基本設計が終わり、実施設計が終わりっていうような感じでやっていくわけです。
それで、周りの人から見て公園であるということで加えたいので、園芸はできなくても、それに近いことやりたいなと思って屋根に上れたり、ただ見るだけでもいいから庭として考えていった。そこは運動したりにも使えるけど、空調機械もあったりするでしょ。それをどうするかということは普通は重要なテーマじゃないけど、このプロジェクトにおいてはすごい重要なのでそのスタディをします。ベニヤを用意してそれにアクリル絵の具を塗っています。これで何枚も体育館の丸をつくって乗せて、そこに良い形って言うのはどういう形か試しています。それで、室外機隠しの小屋みたいな家型のものをつくろうとしています。それをいっぱいつくって試して、それを並べたりして。それでだんだん決まってくるわけですね。今は現場にはいって、これは現場の小屋に持っていった模型ですね。ちょっとイチョウも見えます。
さっき言いましたように、こういうふうに体育館があって、そこに箱があってそこに置いているだけ。これをどうやって原っぱ的なものにするのかということなんですけど、お気付きのように、ここには原っぱであることの形式ないんです。さっきの青森の美術館だったり、馬見原橋みたいな強い形式性がないんですね。ある意味では、素直につくっている。どちらかというと、もののあり方で原っぱ的にしようとしてるんだなあと思うんですよね。
例えば、地下の柱とか梁にハンチを付けて、それで柱面取りしているんです。どういう形に面取りをするかを原寸で、相当研究して考えて。面取りすると梁と柱が面にならないわけですけど、そういうことも含めて寸法のルールもつくっていくという、すごく地味なスタディを延々とやるわけですよ。面取りしたものがコーナーでどうなっていくかっていう問題なんですけど、それをいちいち見ながらやっているんですね。いたって普通のことをコツコツとやると絶対普通じゃないものになるという確信みたいなものがあって。例えばこれは、歪んでいるのはフリーハンドだからじゃなくって、歪んだ照明をここに貼付けようか。これなんか涙ぐましいんですけど、これは既製品ですが、これに合うサイズにどうやって周りを張れば良いかというスタディなんですよね。これもすっごい地味な。これは真似しちゃだめですよ。体育施設の中は走りますから、面取りしてあってもぶつかったらやっぱり痛いでしょ。だから面取りした上にやっぱりガードをつけたくなるじゃない。でもそれをつけるのはかっこ悪いなって思うんですよ。だから面取りのところをさらにかき取って、かき取った部分にさらにシリコンを充填して、当たってもシリコンにぶつかるコーナーにしようというような。だから現場の中は模型がわわわと増えた。簡単に言えば、最初にお見せした馬見原橋のように、全部のもののつくり方が人の目を意識しないような普通のやり方でつくってあるというようなことを、公共建築全体でやれないかということなんですね。

平沼 : 形式に対して何かを行うというようなタイプのようなものではなく、コンセプトでつくっていくというつくり方でもなく、1個1個の物質との対応でつくっていった、系統を見せていただいた感じがします。建築の作家が、一つの手法で解いていくのはいつものパターンですけど、つくり方が全然違いますよね。

青木 : 前につくったものの反省というのが、どれもね、
自分では満足している面もあるけど、ある面ではどれも納得いかないですよね。なんか違うなぁって思うから、どうしても次の時は違うっていう。

平沼 : なるほどですねぇ。

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