芦澤 : 陰影というのか、そういう光と影というところで、色は白でいこうと考えているわけではないですか?素材からくるところですか?

妹島 : 素材の色に興味がありますが、光がかわってしまうとまたわからないところがありますね。色もね。ある時期までは明るすぎて色がわかりにくかった経験をしたのですけど。そうはいっても私たちは素材の色を使ってそのままやろうとしているから、でも、どうしても塗装しなければいけないところもでてくるから、コンクリートの色と近いのはどれかとか、アルミの色と近いのはどれかとか、その素材をどういう光の状態でみるかによって、アルミもコンクリートも白になってしまったりしますね。それでどうやって素材そのものの色を決めるかというのは迷ったりしています。

平沼 : 2つめにご紹介してくださったTハウスのことを聞く前に、僕たちが学生の頃でしょうか。妹島さんがはじめてつくられた住宅、プラットフォームTには衝撃を受けた記憶があります。それまでの建築は、周辺を囲いこみ、頑丈につくるということをやられている建築家の方が多くいたのに対して、かなり開放的な計画をされていました。そのあとも、小さな家であったり、梅林の家であったり、妹島さんの独特な住宅感をだされていました。いま、Tハウスをみていても思ったのですけど、僕にはいくつかの疑問があるのですね。まずそのひとつは、スケール感のとらえ方が、妹島さんにしかできないとらえ方をされているんじゃないかと思っています。普通だと、ある小住宅をオーバースケールにしただけのつくり方でだったり、ニュートラルといえど、開口部や動線からつかい方が限定されたワンルームのつくり方だったり。でも妹島さんの場合、内部であったり外部であったり、犬島のように一個一個の家であったり部屋であったり、スケールのとらえ方って、どんなコントロールしているのかなと不思議に思っています。妹島さんのワンルーム感は、意外にも、とっても人と近接したものになっていると感じているのです。

妹島 : スケールは結構、重要なのだろうなと思っています。

平沼 : 具体的なつくり方をお聞きしていきたいのですが、たくさんのスタディ模型であったり、何か特別な方法で、空間のスケールをかなり試されているのは…ないでしょうか?

妹島 : 模型って大きいのものから、100分の1、200分の1、といろんなスケールでやっていくと、建築がただのプロモーションで見れる側面と、自分の体で感じることのできる絶対的なスケールみたいなものと、両方でてくるのです。それが、プロジェクト毎に、自分の中でつながっていく。でもそんなことにたくさんの時間がかかっています。例えばTハウスというのは最終的に1.9mの高さになったのですが、最初はもう少し下げていたのですよ。クライアントの方があんまり大きい方じゃないってこともあって、1.85mくらいで決定していました。メインの場所は全部吹き抜けているので、ちょっと座るとかちょっと寝るとかだけなので、すぐそこに次のものがあるみたいな感覚でつなげていきたかった。でも、クライアントがやっぱり不安だというので1.9mにしてつくってみたら、クライアントがやっぱりもうちょっと下げたほうが良かったですねといってくださったりする。でも私たちは、所内で1分の1をつくっても、それでもやっぱりこっちも不安になる。だから絶対的なスケールと、実際にできるものになるときと、いろんな関係性の中でそのスケールが表れていることがあるから…私もわかっていないのです。

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