妹島 : これではスラブが2mになってしまうと、でも2mもつくるわけにいかないのでもっと急にすると人間が使えないと。コンピュータと佐々木さんのアドバイスをもとにかたちを修繕していったのですけれども、それにともなって、私たちが模型をつくってどうなるかということやっていました。こういう中庭は、大きなワンルームを2つの丘によってわけて、さらに庭によってエリアをやわらかくわけていくためのものなのですけれど、一方で構造的なコンクリートの重さをとっていくための穴で、ここは重過ぎるからというと、例えば大きな穴をつくって重さを減らすというやり取りの中で決めていっています。同時にいろんなエンジニアの人とのコラボレーションで平面が決まっていっています。ここでは基本的に空調を使わないで、湖からの冷たい風をいれます。この窓が3枚に1枚空くようになっているのですけど、ある温度になると自動であいて冷たい空気が入ってきて、高いところから排気するようになっています。風のスピードが速すぎると不快なので、自然換気のスピードがゆっくりいくようにいろんなポジションを決めたりしました。これは、自然光のシミュレーションです。これだけ窓があっても平べったいので、いろいろ工夫が必要でした。一番チャレンジングだったのが音のシミュレーションで、全体がワンルームなのだけれども、床と天井が上がったり下がったりするということと、庭の場所で音をコントロールしていく。全部を静かな場所にしたくないから、例えば学食とかレストランはわいわいするし、勉強コーナーにいったら静かになるといったことを高低差と穴で実現しました。その結果だいたい形が決まってきました。
このスライドは平面図ですけれども、それをそのまま模型にしたのがこの写真です。大体はみんな、こちらの方から入ってくるわけですね。それで、学食とカフェがあって、奥に生徒たちの事務室なんかがあって、上がっていくとレストランがあって、この尾根沿いを歩くと一番奥がライブラリーで、下がっていくとリサーチセンターとオフィスがあって、この辺にグループワーク。こっち側の小さい丘をあがるとマルチパーパススペースがあります。こういう穴は、ここだけを切り離して使う時は独立した別のエントランスになって、こっちからリサーチセンターにいくとか、ここからフードコートに入ってくるとか、ばらばらにも機能するようになっています。私がここで面白いと思っているのは、この地点にいるとこの辺しか見えないし、ここにいくとこういうところしか見えないこと。ワンルームだけど、いろんな場所が次々につながってくるワンルームだということ。それからもう一つ、例えば斜めに開いた開口部を見ていると、内部と外部を歩いている人が重なって動いている。違うことが並行して起こっているということです。金沢では平面的な広がりで、次にニューミュージアムという小さい敷地の中で縦に積む、垂直的なつながりのもの。それが縦横両方つながってきたようなものかなぁと思っています。これはできあがってからの写真です。スラブの上も良く見えるし、さっきの庭があるので、下もつながっていて、内部空間と同時に既存のキャンパスが見えます。スラブの下は、冬は寒くて少し寂しい場所になるのですが、春から秋までは中の拡張の場所として使われる。この写真は、エントランスのカフェの辺りです。こういう坂道で、これが尾根です。建物があってガラスの横を人が通るというのより、もっと一体的な空間を感じながら、別々の目的の人が動いているような。奥のほうまで行くと、ライブラリーがあって、これはレストランですね。レストランから降りてきたらフードコートがあって、フードコートの先にまた小さい丘があって、その丘を向こうにいくと、マルチパーパススペースがあります。ここに可動の間仕切りがありまして、電動で閉めます。

次は、去年の暮れに完成した、都心にあるごく小さな家です。4人家族の方が住まわれますが、基本的にワンルームの空間をつくろうとしました。ここから半階降りたところがカーポートで、半階上がったところに玄関とダイニング。これでだいたい2mですね。で、その上階にバスルームがあって向こうにテラスがあって、3階にベッドルームがある。子供のベッドがこういうふうに置かれて、1階降りたら、子供の勉強部屋になって、上がったらテラス。これは前面道路からです。半階上がっているのですぐ上にダイニングが見えて、その向こうに3階のテラスが見えます。天井高さが1.9mくらいしかないので、ちょっとのぼったらすぐ上の階です。上から通してみてみると、ここにベッドがあって、お風呂があって、ダイニングキッチンがあって、家族の勉強部屋みたいになっていて、それが穴を通してつながっています。

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