平沼 : その続きで質問なんですけど、

スライド : 『建築と地域性の関係について、どんなふうに考えていますか?』

平沼 : 地域性と書いてあるんですけど、場所性とも、外と内の関係について、僕、藤本さんのお話をたくさん読んだことがあるんですけど。

藤本 : 何も書いてなかったんじゃないですか?

芦澤 : あんまり読んだことないですね、地域性(笑)。

藤本 : そうですね。僕もそういえば、あんまり使ったこと無かったですね。

平沼 : あんまり興味ないですか?

藤本 : いやいや、興味ありますよ。ただ、地域性って言っちゃった瞬間に何かに絡めとられちゃうような気がして、むしろ、敷地を見に行くときって、東京の敷地でも海外でも楽しいじゃないですか。こんな場所があるんだ!みたいな、単純に楽しいだけじゃなくて、それまで自分の知らなかった感じとか、知らなかった生活観みたいなものを含めて、いろんな情報が入ってきますよね。もちろんプログラムの話もあるし、もちろんお施主さんの言葉もあるんだけども、同じように敷地の状況というのは、情報としていったん頭の中に入って、身体をとおして出てくるときに、すでに地域性というものは組み込まれているような気がするんですよね。だからあえてそこで、何かって言っちゃうと、そこだけ切り離して言うっていう回路がないんですかね。だけどすごく興味はあって。例えばいま深?でやっているんだけど、日本とはやっぱり違う、だったらこんなものありえるんじゃないのって言って、自分たちが今までにやったことがないような空間のつくりかたとか、自然とでてくるんですよね。それは地域性に配慮してとか、そういう直接的なことではなくて、そういう場所で人間ってこうやって活動するよね、みたいなところまで落とし込んで建築に変換していくということをやってるのかなっていう気がしますけどね。

芦澤 : そうすると例えば、工法とか、マテリアルとか、そういうところで地域を拾っていくっていうことは、あえてやらなそうですよね。

藤本 : あ、でも、おもしろそうだと思ったら。例えばこのケルンの大聖堂って、ライムストーンみたいな石でできているんですよ。だから最初は、ライムストーンみたいな石でつくりたいって言って、そういうのはあるんですよ。すごいダイレクトですけど。でもやっぱりその場所でずっとつくられてきた石とか素材みたいなもので、でもまったくちがう何かができないかなって。結果的には白にしたことで、逆に開口部から見える周辺の風景っていうものが、全く違うものに見えるから、違う意味でね、周辺を再編成したっていうことはあったのかなって思いますよね。

平沼 : では、地域性に引き続いて、

スライド : 『建築の中で、人と人の関係はどんなふうになっていけばいいと考えていますか?』

藤本 : おー。えっとね、僕は実はこの辺は中立的な立場で、理想社会を実現したいとは思っていないんですよね、実は。というのは、どんな社会であれ、人間がつくり上げる社会は素晴らしいと思っているんですよ。もちろんいろんな例があるので、単純には言えないんですけど。人間と人間の関係をどうしたいとは思ってないんだけど、いろいろにしたいっていうのはありますね。いろいろなってくれると、そこで犯罪が起こるかもしれないし、なにか素晴らしい出会いが起こるかもしれないけど、その振れ幅があった方がいいなと思っているんでしょうね。

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