平沼:
では、続いての質問です。建築の中で、人と人との関係がどのようになっていけば良いと思っていますか?さっきのプロジェクトでも人が集まる空間を作りたいと言われていましたし、結構、人のことのプロジェクトをされていますよね。
松本:
そうですね。最近多いなって思っています。今回のクライアントの方は兼業アーティストなので特に特殊な人という訳でもないのですが、別件で、主婦の方で趣味で服の制作をして売っておられる方がいて、その人の住宅の改装をやっているのですが、二階の大きなベランダでバザーをしたいと言われていて、そこが今、バザー会場兼玄関のような場所になっていまして、最近そういうことが多いなと感じます。それは、私たちがそういう風であれば良いなと思っているのもあるし、色々な人が自分たちが街でやりたいことを考えて実行しようとしているのではないかと考えています。
木村:
ちょっと駆足で説明しますが、これは始めたばかりのプロジェクトなんですが、クライアントさんは工務店を経営されていて、クライアント兼ビルダーという状態です。出された要望というのがほとんどなくて、平屋であることと、四寸角の現地の材を使っているというのがそこの工務店の売りなので、ぜひ使用したいとのことでした。ただ、普通の平屋では四寸角はオーバースペックなので、どういうことをしようかなと考えたプロジェクトです。
これは筋交いも全部120mm角を使用していますが、高さ4mで幅が4mスパンのもののグリッドが繋がっているというものです。近くで見ると120mm角はかなり存在感があって太いものなんですが、4mスパンで使用するとかなり華奢なフォルムで、だけど近くで見るとずっしりしている。
領域性のあるものとして、これはすごく田舎にあるんですが、山々や田んぼにあるものと、構成が近いものになるのではないかと考えています。
平沼:
話は変わるのですが、どんな建築家にあこがれていますか?
芦澤:
ちょっと待って、今の話が一番謎だったんですが(笑)。まず用途は何ですか?
松本:
住宅です(笑)
木村:
この中に居室が発生していくんですが、薪ストーブを置きます。薪ストーブというのは一台で50坪くらい暖められるくらい高性能で、ワンルームだけどこれ一台で家全体を暖められて、個室として区切られるというものです。そしてもう少し複雑な形になるんですが、先ほどの「三人の作家のためのアトリエと住宅」のように壁がずれている構成がこれに加わるかたちで今進んでいます。
それで、平沼さんからの質問については、建築家自体に憧れるというよりも、同時代の色んなのクリエーターを見てすごいなと感じることがあります。先ほど、建築家にできることとできないことという話をしたんですが、最近思うのは、建築とは絶対違うんだなって思いながらものを見るのが面白いです。この間なんかは、演劇とダンスをふたつ立て続けに見ていたんですが、ひとつは快快、もうひとつはチェルフィッチュでした。そのふたつを見たんですけど、チェルフィッチュは演劇の文脈で、話していくと長くなるので置いときますが、快快を見ていると、これはどうも建築では無理だなという点がまざまざと見られるんですね。なので、そういうものを提示してくれる人と、自分自身が建築家としてそういったものを提示されるという状態は、今の自分にとっては健康的で良いなって思います。
平沼:
建築家としての自分たちの個性はどんなところにあると考えていますか?
木村:
これは、逆にお聞かせ願いたいところで、分かっていないです。分かっていればセルフプロデュースができるところで・・・どこがいいですか?
平沼:
さっき二つくらいプロジェクトを見せていただいた中で、やっぱり、セクションの考え方が面白いのと、すごくリアルに模型をつくってくるじゃないですか。開口のところとか、実際のレベルに近い実写並みにつくっているので、スタディというレベルじゃないものをつくっておられるなと感じました。断面模型をつくることに、ある種の新しさ、ある種の落ち着きがあって、断面から考えるのは、古い建築家には多かったので、そこに個性的な部分を感じたんですが、芦澤さんはどうですか?
芦澤:
僕は、二人はおぼろげなことを言いながらも、でもしっかりとした強度のある考え方で、それを建築で抽象的に表現しているなと思っていました。模型は、塀のものはよく分からなかったんですが、他のものはよく表現されていて分かりやすかったと思います。
実際の建築はまだ見せていただいていないんですが、現実の建築はその抽象度を保ったままいくのか、もう少し現実には肯定的な意味で振り回されながら、それらを逆手に色々な次元に持っていくのかどちらか、すごい楽しみです。
平沼:
次の質問にいくのですが、どんな建築空間をつくりたいと目指していますか?
もしかして目指しているものというのはあんまりなくて、芦澤さんも言っておられたんですが、強い意思や考え方があるんですが、それを建築で表現したときに、ナチュラルというか、弱くというか、表現しないようにわざと持っていっている、もしくはそれを目指しているのかなと感じたんですが、本意はどうでしょうか?
木村:
そうですね。僕たちは、建築ができることって場所とか経験という話から、あまり空間という言葉を使いたくない気分なんですね。それは事後的に現れてくれたら良いなというくらいに思っていて、それは場所であると。その場所に何があるか、対象があり、バランスがあり、質があり、それらをじっくり観察した結果でき上がる場所が、結果的にもしかしたら空間というものになれば良いかなとかは考えたりはします。

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